概要
イネーブルドスピーカーの基礎検討に取り掛かった。基本設計を終えた。
背景と目的
前回、サラウンドスピーカーの製作を行った。今回は、スピーカー構想に基づきイネーブルドスピーカーについてより詳細な基本構想の整理と、試作を通して設計内容を固める。
詳細
1. 基本構想
- 低域は200Hzよりやや低い帯域まで再生
- サイズは、フロント、リアスピーカーの天面に載る程度の大きさにしたい
- 角度をつけて天井を向けられる
Web上の情報を漁ると、チャンネルとしてはおおむね180Hz程度まで信号があるらしい。そこで、150-200Hzくらいまで再生可能であることを目指したい。
2. ユニット選定
私の手元には、10年以上前に購入したPE-101Aが4個本以上余っている。 PE-101Aは、
- 口径: 10cm
- f0=80Hz@JIS箱
- 再生帯域: f0~20kHz
- 能率: 90.5dB
というもので、ある程度小型のエンクロージャーでも再生帯域の要求は十分満たせそう。ということで、これを使っていきたいと思う。購入すれば単価1万円程度するものであり、ユニット代をかけずに済ませられる。
3. エンクロージャー試作
3.1 エンクロージャー寸法検討
こちらを参考に、
- 上記ユニットのパラメータ
- 密閉型
として、目標の低域特性を満たせるエンクロージャー形状を決めた結果、
- 縦(長手): 234mm
- 横(短手): 174mm
- 奥行(厚み): 100mm
という寸法になった。長手は、サラウンドスピーカーの長手と合わせてある。厚みは、上向きに設置することからあまり暑くないほうが良いので100mmに抑えた。板厚9mmとして単純な箱の内部容積を計算すると2.76Lあるが、ユニットや補強材などで目減りを考えると、2.4~2.5Lだろう。バッフルステップの影響を考えると、これよりも1kHz以上の帯域のレベルが上がってしまうと思われるが、AVアンプのイコライザで補正できると思うので、ひとまず良しとする。
3.2 試作箱
上記の寸法で試作した。材質は、9mm厚MDF。検討の際、内部にアクセスしやすいようにバッフルをねじ止め式としてある。
4. 各種調整、試聴
4.1 補強材追加
試作箱にユニットを入れて鳴らし、各面に手を触れてみると、バッフルと裏板の振動が大きい。補強が必要と判断し、写真にある板状の補強材をバッフルと裏板間をつなげるように取り付けてみたところ振動が収まった。なお、補強材の面は、エンクロージャー側面に対して平行とならないように設置したことによって長手方向の対向面、短手方向の対向面で少しは平行面積が減っていると期待している。
それと、エンクロージャーの背面を手でたたいた時のスペクトログラムを見てみた。あまりわかりやすくはないが、数100Hz以上の帯域で減衰が速くなっているように見える。これが補強の一応の効果と信じたい。
- 補強なし
- 補強あり
4.2 吸音材
次に、密閉型なのでバスレフに比べて多めの吸音材が必要となる。また、単純な直方体なのでまったく詰めない状態では定在波が発生しやすい状況に違いないが、手持ちの吸音材をふんわりと全体に詰めてみたところ、わずかにクリアになった感じはするが大きな差はなかった。これは、定在波が発生するとは言うものの、箱の内部で起きていて直接出てくる音ではないので変化が感じ取りやすくはないのだろう。
4.3 周波数特性
最後に、周波数特性の確認として、バンドノイズ、正弦波、楽音等を鳴らして聴感評価を行った。165Hz以下では明らかな音圧の低下を感じるが、まずまずイメージ通りのf特感で鳴っていた。200Hz付近にややピーク感を感じるが、あまりに目立つようならイコライザでどうにかすることになるだろう。
5. 設計
上記の検討を基に、本設計を行った。 寸法は、上記と同等である。バッフル端の丸めと斜めカットは、回折低減と他スピーカーとの意匠共通化目的で施す。また、バッフル面がやや傾くように楔形の脚が付く。ただし、角度は設置後に追い込むことになるとおもわれるため、エンクロージャーに固定はしない。
5.1 トップフロント相当チャンネル
メインスピーカー上部に載ることを想定し、短手がリスナーに向くように設置する。短手の裏面にスピーカーターミナルが付く。バッフル面の地面に対する傾きは仮で15°としてある。
5.2 トップリア相当チャンネル
サラウンドスピーカーの上部に載ることを想定し、長手がリスナーに向くように設置するため、長手の裏面にスピーカーターミナルが付く。バッフル面の地面に対する傾きは仮で8°としてある。
まとめと今後の課題
イネーブルドスピーカーの基礎検討を通じて基本設計を実施した。次回は、製作を行う。