概要
JRAの2022年リーディングサイアーに関する一考察である。過去10年にわたるリーディングサイアーランキングの変遷とともに今年のランキングの意味合いおよび来年以降のトレンドについて考察した。
背景と目的
2022年もJRA全レースが終了し、リーディングサイアーランキングが確定した。本記事では、過去10年にわたるランキング変遷とともに今年のランキングの意味合いと今後のトレンドについて考察する。
詳細
1. 2022年リーディングサイアーランキング
以下は、2022年リーディングサイアーランキング上位10傑。
順位 | 馬名 | 勝馬率 | EI | 賞金[億円] | 代表馬 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ディープインパクト | 0.364 | 2.03 | 45 | アスクビクターモア |
2 | ロードカナロア | 0.305 | 1.32 | 39.1 | ダイアトニック |
3 | ハーツクライ | 0.328 | 1.51 | 30.9 | ドウデュース |
4 | キズナ | 0.352 | 1.64 | 30 | ソングライン |
5 | ドゥラメンテ | 0.349 | 1.57 | 29.6 | タイトルホルダー |
6 | キングカメハメハ | 0.362 | 2.27 | 25.7 | スタニングローズ |
7 | ルーラーシップ | 0.205 | 0.98 | 21.8 | ソウルラッシュ |
8 | モーリス | 0.295 | 1.17 | 21.8 | ジェラルディーナ |
9 | エピファネイア | 0.255 | 1.04 | 20.2 | イズジョーノキセキ |
10 | ダイワメジャー | 0.399 | 1.41 | 20 | セリフォス |
- 上位4頭は、昨年とメンバー、順位とも変わらず。全体としては、2頭が入れ替わった。
- 1位はディープインパクト(以下、ディープ)。さすがに産駒数も減ってきて賞金額も2位との差が縮まってきた。直仔のG1勝ちも2勝と少なくEIが10傑内の他馬に負けたのも初めてだろう。
- 2位と3位はどちらも稼ぎは増えたがほぼ昨年同様の傾向。この2頭はどちらも平均的に強い仔が多く稼げるということだろう。
- 4位キズナは、昨年も書いた通りロードカナロア、ハーツクライよりも勝馬率に優れ、EIも高いのだが、全体としてはハーツクライに少し及ばないのも昨年同様。トップ3に入ってもおかしくないのだが、現役産駒数の差か?
- 5位は、昨年書いた通り、やはりドゥラメンテが上がってきた。EI、勝馬率とも優れており、実力には全く疑いがない。
- 6位キングカメハメハは、昨年から下がったが、直仔のG1勝ちもあり、EIがトップ。勝馬率も高く、やはり地力がある。
- ルーラシップは、順位変わらず。稼ぎが少し減った。EIが低い。
- 8位モーリスも、昨年書いた通り、食い込んできた。実力通りといえる。
- ダイワメジャーは勝馬率がここへきて改善してきた。指標だけ見るともっと上にいてもおかしくないレベル。
2. 過去10年間の変遷
図2は、過去10年のリーディングサイアーランキングの変遷である。
ディープが12年連続首位となった。もはや語ることがない。ロードカナロア、ハーツクライは安定して上位を形成している。ロードカナロアとディープの差はさらに減ってきてリーディングに近づいている。ハーツクライは年齢的には種牡馬生活後半に入っているが、まだまだ安定している。キズナは、トップ3には届いていないのが少し不思議だが、安定してトップ5を形成しつつある。 昨年、
キンカメは粘っているが産駒数が減るので今後は徐々に後退していきそう。
と書いたが、G1勝ち直仔が2頭出てEIで盛り返している。まだ同等のポジションを確保する力があるのだろう。ドゥラメンテは3年目でトップ5に入ってきた。極めて有望。モーリスも、同様に有望株であることを証明しつつある。オルフェーヴルは少し雲行きが怪しいと書いたが、やはり少し落ちてしまった。エピファネイアは下がってしまったが、トップ10の一角。他馬の勢いに押され気味に見えたルーラーシップ、高齢のダイワメジャーが、トップ10を維持している。
3. 今後の展望
前節までを踏まえてここでは今後の展望を行ってみたい。
- リーディングは、ディープインパクト、ロードカナロアの2強が争う。ディープインパクトはロードカナロアとの差がかなり詰まってきたし、現役産駒数も減るので、トップを取れたとしても非常に僅差になるだろう。
- 3-5位グループは、ハーツクライ、キズナ、ドゥラメンテで争うと思われるが、ドゥラメンテが極めて優秀なので3位になるかもしれない。
- 6-7位グループは、モーリス、キングカメハメハが有力。モーリスはさらに上昇し、もしかすると3~5位グループに迫るかもしれない。
- 10位前後グループは、ルーラーシップ、オルフェーヴル、エピファネイア、ダイワメジャーにキタサンブラックが食い込みそう。キタサンブラックはイクイノックスの活躍が目立つが、それがないとしても20位以内は十分確保できたので、優秀なのは間違いない。
新興勢力については、以前から毎年書いている通り、初年度100位以内であることが、将来のトップ10の目安となる。特に、50位以内は、トップ10どころかリーディングを狙う器ともいえる。2021年該当馬の2021年→2022年順位変化は、ドレフォン(43位→16位)、シルバーステート(59位→27位)、イスラボニータ(79位→29位)、キタサンブラック(85位→14位)と順調に上がってきていて、特にキタサンブラックは顕著な活躍。2022年初年度の新種牡馬で該当するのは、マインドユアビスケッツ(73位)、リアルスティール(75位)、サトノダイヤモンド(86位)、サトノクラウン(92位)がいる。今後数年でトップ10に顔を出す可能性が十分ある。50位以内は残念ながらいない。
順位 | 馬名 | コメント |
---|---|---|
1-2位グループ | ディープインパクト、ロードカナロア | 僅差で争う |
3-5位グループ | ドゥラメンテ、ハーツクライ、キズナ | ドゥラメンテが追い抜く可能性高い |
6-7位グループ | キンカメ、モーリス | キンカメ安定、モーリス上昇 |
10位前後グループ | ルーラーシップ、オルフェーヴル、エピファネイア、ダイワメジャー、キタサンブラック | 常連にキタサンが食い込みそう |
新興勢力 | マインドユアビスケッツ、リアルスティール、サトノダイヤモンド、サトノクラウン |
キングカメハメハの子孫の活躍について
今年のG1勝ち馬を見ていて気付いたことは、24レース中10レースでキングカメハメハ直仔あるいはその直系が勝っていたこと。キングカメハメハ自身はピークを過ぎてしまっているのと、同時代のディープインパクトの後塵を拝したが、ロードカナロア、ドゥラメンテ、ルーラーシップといった後継が活躍する時代に入ってきたといえる。ディープインパクト直仔種牡馬は今のところキズナが目立った存在であり、今後はコントレイルも加わっていくと思われるが、孫世代ではディープ、キンカメは拮抗しそうで面白い。
まとめと今後の課題
2022年のリーディングサイアーランキングについて、過去10年の変遷および今後の展望を交えて考察を行うことができた。2023年も動向を見守っていく。